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2021.06.24

販売士

コロナ禍で原点の 振り返りを。-良くなる店と甘んじる店の分かれ道-

●久々に体験する気分の良い接客
 コロナ禍で友人たちとオンラインお茶会を開きました。ひとりが素敵なスカーフを肩にかけていて皆が褒めると「実はこれワケありなのよ」と話し始めました。
 
 春先に都心の専門店でスプリングコートを購入したそうです。高めの価格でしたが薄い布地のリバーシブル仕立が気に入った一品でした。帰宅後、鏡の前でコートを羽織ってみると裾のリバーシブ部分のほつれを発見。すぐに店へ連絡を取り「明後日、身内の祝い事の席に着ていく予定」と事情を説明すると、翌日にそのブランドの幹部が2名で自宅を訪れ新品のコートとお詫びの品として春色のスカーフを置いていったそうです。
 
 不良品の交換は当然な事ですが宅配対応で済ますのが当たり前になっている昨今、わざわざ幹部が出向いて謝罪し詫びの品まで用意するというのは近年にはない丁寧さです。お茶会メンバーは感心しつつ“売れない時代の実店舗の危機感が強いという証し”だと意見が一致しました。
 
 そこで「近頃アパレル系ショップの接客が良くなってきた感じがする」という話題でひとしきり盛り上がりました。ある友人は販売スタッフが以前より時間をかけてじっくりと接客してくれるようになったと言います。そして素材やシワの付きやすさ等、着心地について質問すると的確な答えが返ってくるように感じているそうです。「今まではお似合いです、オシャレです、しかスタッフから言われなかったが、この頃は専門的な会話ができるスタッフがいる実感がある」という意見があがりました。
 
 私の実感は“タイミングの見計らい”です。従来はスタッフが売りたい気持ちが強かったためか「人気の商品です、私も持っています、最後の一枚です」というお客の気持ちを煽る言葉をよく使っていましたが、近頃はその煽り言葉の登場頻度が少なくなっているようです。
 
 先日セレクトショップでシャツを試着した時にこんな経験をしました。「素敵なシャツだけど少し厚手だから春には何度も着ないかもネ。。。」と言うと販売スタッフは「このシャツは目立つのでお手に取るお客様が多いのですが、値段が高いので諦めてしまいます。多分すぐには売れないと思います」というのです!その時は閉店時間の30分前だったので「じゃあ一晩悩んで買う気になったら明日来るね」と言って店を後にしました。従来には経験できなかったスタッフとのやりとり。押しつけがましさや煽り言葉が一切ない気分の良い会話でした。
 
 他の友人からは取り置き期限を明日まで延長してほしいと店に連絡をすると「ご多忙でしょうから〇日間延長いたしましょう」と長めの猶予をくれた体験談も出てきました。
 
 コロナ禍→外出自粛→ファッション不要→EC活性→リアルショップ苦境という流れの中、販売の現場では数少ない来店客をいかに売り上げに結び付けるかを考え、苦心をした上で前述のような客が気分良く買える、客への配慮ある対応が再確認されている表れだと思います。逆境からの努力が感じられる体験談です。
 
 しかし、お詫びは丁寧に、商品の専門知識を持って販売、押しつけがましくなく配慮ある接客などは本来的に店舗の基本姿勢です。売れていた時代に忘れがちになっていたあるべき姿をコロナ禍で取り戻したのです。
 
 

●ビックリするコロナ禍の麻痺感覚
 緊急事態宣言の2回目がくだった時の出来事。都心駅ビルのレストラン街で仕事帰りに2名で食事をしました。
 
 和食の定食屋A店に入店すると、50代男性店員がすぐにメニューとおしぼりをテーブルに持ってきて「これが本日ない物です」と8㎝×7㎝の小さなレシートを置いていきました。「これが本日のおすすめメニューです」ではなく小さなレシートの品切れメニューで、そこには9品が印字されていました。あまりにも自然なメニューとおしぼりと品切れのレシートの提示だったので気にもせずに何を食べようかと楽しい気分でメニューをのぞいていたのですが、品切れメニュー9品と照らし合わせると注文できるメニューが限定的になりせっかくの食事が台無しになりました。
 
 宣言下で客数も少なく仕入れもしにくい状況なのでしょうが店頭に案内もなく「申し訳ない」の言葉もなし。意地悪な見方をすれば「コロナ禍だからしょうがないでしょ」の店意識が透かして見えるような出来事でした。
 
 後日この駅ビルの管理者に連絡を取るとフロアマネージャーが「コロナ禍といえどもあってはならない店舗姿勢」と私以上に憤慨をされ、こちらが宥め側にまわるほどでした。その時「良識あるマネージャーがいるのでこの駅ビルは大丈夫」と感じました。その後マネージャーからの連絡で店への厳重注意をした事、その時の店員が店長だった事が報告されました。A店の本部がコロナ禍の運営をどのように計画し店長に指導しているのか、コロナに慣れコロナを不振理由にしているのなら売り上げは落ちるばかりです。
 
 

 終息の目途が立たないコロナ禍でどの業界も苦境を強いられています。窮地に立つ時だからこそ本質を考え自分たちの価値を再認識し、基本に戻って店舗運営とお客様コミュニケーションを実行するチャンスでもあると思います。

 
 

(記:島村 美由紀/販売士 第41号(令和3年6月10日発行)女性視点の店づくり㉖掲載掲載)