不動産フォーラム21
トゥインクルにイッテクル-大井競馬の新楽しみ方-
人生で初めて馬券を買った日
人生初の“競馬場で馬券を買う”というレクリエーションをやってみました。
実は私の生まれ育った町には大きな競馬場があり開催日には大勢の男性がゾロゾロと駅から競馬場に行列をなして歩き、終了後は街路がゴミだらけ。“おけら街道”という異名をとる道沿いは蹴飛ばされた看板や飲料ケースが転がっていました。学校や親の会話でも競輪競馬に対する否定的な言葉を聞いていたので「ギャンブルはNG」というイメージを子供ごころに強く焼き付けた幼少期でした。
1986年、バブル景気が社会全体をイケイケムードにし始めたころ、大井競馬場で初のナイター開催が始まり、大きくマスコミに取り上げられ「女性も行きやすくなった競馬場」のイメージを打ち出した時、ミーハーな私は子供時代の「ギャンブルNG」の掟をゆるめ、施設見学をしてみました。当時の記憶は細かく思い出せませんが、「こんな程度の整備では女性受けしそうもないなあ」と感じたことを覚えています。正直、ステキとは言い難い赤ペンを耳に挟んだおじさんの場という印象でした。
それから32年の月日が流れ、今回は競馬場に行き馬券を買い興奮までしてみるという楽しみ方を体験したのです。
まるでホテルライクな競馬観戦
事の始まりは知人から「大井競馬場のトゥインクルレースが面白い」と誘いを受け7月の平日、夕方6時に北門をくぐりました。場内は整備され、パドックではレース直前の競走馬がお披露目されています。私たちはG-FRONTスタンドという2015年にオープンした新しいスタンドに入館しました。ここはゴール前に立地した館でレース展開を最もリアルにみられる場所です。特に3階には一人やカップルが独立性を保ちながら観戦できるプライムシート(3,000円/1席)、まるで自宅のリビングにように4名が一緒に観戦できるプライムボックス(12,000円/1室)、そして8名が入室できるVIP気分のプライムルーム(30,000円/1室)がありスナックや軽食を楽しみながらレースのゆくえを観戦できるホテルライクなリッチな空間になっていました。さらにこの最新フロアのウリはTCKプレミアムカード会員(無料)になることでキャッシュレスで席の末端機で投票ができ、飲食の精算や馬券の払い戻し等も退館時に一括で処理できる手軽さが人気になっています。また特別に馬券購入金額に応じたハロンというポイントがたまり、これを投票用マネーやオリジナルグッズに交換できるというスペシャルサービスも付加されていました。
さて席の末端機でサクサクと馬券購入可能なお手軽さは、ついつい何種類もの馬券を買ってしまいがちで素人には少し危険な感じがしました。ところが馬を選ぶのが大変な作業。そのためには馬の様々なデータが載っている競馬新聞があるのですが、これが複雑難解で、まずこの新聞の読み方から教えてもらわないと情報が解読できません。なおかつビッシリと文字が詰め込まれた新聞は老眼鏡が必要です(持っていてよかった!!)。新聞解読に取り組んでいるうちに当日の最終レースが終わってしまった感じでした。さらに、馬券の買い方には複雑パターンがあるらしいとは知っていましたが、9パターンもあるのでこれも迷いの壺にはまっていきます。
結局素人の私は3時間の観戦で少し勝ってまあまあ負け。ビールを飲みサンドイッチやおつまみを食べ知人とさわぎ、馬の美しさに見惚れ騎手服のデザインを楽しむレクリエーションを会社帰りに体験できました。平日のちょっとした気分転換になりました。
競馬人気が回復傾向
今年4月4日付の日経新聞によると大井競馬の人気が回復していて、2010年度に900億円台までに落ちた売上は17年度に1,200億円超に伸び好調だそうで、その要因はインターネットによる馬券の購入拡大が順調との記事でした。しかし逆に来場者は減少傾向にあり馬券購入者の1割程度になってしまっていて1日2万人が来場した過去に対し、今では1日5,000人という日もあるそうです。そこで好調を維持するために、現在ファン層の中高年男性から女性客や外国人客の取り込みをしようと「トゥインクルレース」というナイター競馬やイルミネーションを計画して、デートスポットやファミリー対応に力を入れているそうです。
その効果もあってか、私が行った夜も多くの若い女性のグループ客や芝にマットを敷いてピクニックするファミリーの姿を見かけました。32年前の女性客の呼び込みとは違い、今の計画はしっかり実を結びそう気配がします。さて私は競馬新聞の読み方研究から始めましょうか。できれば競馬新聞ニューバージョンが創刊されるといいな、と思うのは我がままでしょうか。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2018年8月号掲載)