不動産フォーラム21
バーゲン熱狂は昔ばなし
懐かしい“バーゲン行列”
皆さんには経験がありませんか。春に買った服が1~2ヶ月後の6月下旬にはバーゲンで値引きされていたという悔しいことが……。気持ちはドン引き、店への不信も募ります。衣替えは6月1日で、夏物はまだ本番が始まったばかりという6月下旬にバーゲンですから、一体どうなっているのだろうと疑問が残るばかりです。
問題は「バーゲン時期が早すぎる」こと。早いところでは6月20日頃からバーゲンが始まっています。ひと昔前は夏のバーゲンといえば夏季賞与が出回った7月中旬~下旬頃が一般的で、期間も1週間から10日間程度だったと記憶しています。
買物好きには特別なチャンスでしたから、仕事を休んでバーゲンに駆けつけ額に汗して人混みで品をあさるシーンがニュースで放映されるような、年に2回のバーゲンは特別なイベントでした。今では館を取り巻くバーゲン行列を見るのも珍しいほどになってしまっています。こんな変化はどこからきているのでしょうか。
バーゲン熱狂は遠い過去
原因は人々が服への関心がなくなり、衣料品の売上が低迷する中、小売業者のあせりから徐々にバーゲン時期が前倒しになってしまったところにあります。
人々の意識変化の1つ目は、人々のファッションを中心としたモノ離れが進行し、お金の使い方がモノから旅や文化や教養やスポーツや社交といったコトにシフトしていること。2つ目はユニクロやGUやZARA等、デザイン性と品質ある安価なファッションが日常的に手に入りやすくなり、高いコストをかけてファッションを楽しもうとする感覚が若い世代を中心に急激に薄らいできたこと。3つ目はインターネットの普及によるインターネットショッピングで外出をしなくともケイタイやPCから簡単に買物ができるEコマースの急激な進展が買物環境を変えたこと。4つ目は新品ではなく中古品もOKという新たな価値観が生まれメルカリを代表とするネットを介したCtoCのリユース市場が拡大し、インターネットオークションやリサイクルショップ(実店舗)が活性化していること。などが挙げられます。このほかにも2017年12月号で取り上げた「エアークローゼット」のように一定料金でファッションや服飾雑貨のレンタルをするサブスクリプションサービスも物を所有することに関心のない若い世代を中心に浸透をしてきています。あらためて、このように原因を挙げていくと“熱狂バーゲン”は遠い昔ばなしになっていくのだと痛感しました。
形ばかりのバーゲンなのかも!?
若い知人が「ちょっと腹が立った」とあるバーゲンについての出来事を話してくれました。都内にある有名ファッションビルの話です。その館は他よりおそく7月下旬から1週間だけという夏のバーゲンが開催されました。日頃からこのファッションビルが大好きな知人はバーゲン初日に勇んで買物に行ったところ、バーゲン商品は3割程度で、すでに晩夏・初秋物のプロパー商品が主力だったそうです。店員は「すでに他施設のバーゲンが始まった6月下旬から値引きをして店独自のバーゲンをやっていた。全国で複数店展開する店なので、他店がバーゲン値段になる中ここの店だけが正価で売るわけにはいかない。この館の大多数が同様のやり方で6月下旬から店内バーゲンをやっており、ファッションビルからのおとがめなし」とのことだそう。彼女がバーゲン初日に目にした商品はバーゲンの売れ残りだったような気がする。形ばかりのバーゲンなのかも!?と不思議がっていました。
思い出してみるとこのファッションビルは数年前までCMや車内広告で派手にバーゲン告知をしていましたが、そんな販促も近頃では見かけなくなりました。どの商業施設でも以前のように年2回のバーゲン時期に売上が跳ね上がることはなくなり、館によってはギフトシーズンの売上が好調との話もあります。事業者によってはバーゲンへの取り組み姿勢を変える時代になってきているのでしょう。
結局、彼女はこれから着られる秋物のワンピースを定価で買物したそうです。
ところで、私はというと、バーゲンには走っていきませんが、ケイタイにECサイトからの50%OFF、60%OFF情報が入るとついつい指を動かしてしまっているというホットなバーゲンを楽しみました。やはりいまだに熱狂しています。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2018年9月号掲載)