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2025.01.06

不動産フォーラム21

“無理せず 肩ひじ張らず 芯を持つ” このごろのZ世代メンズ

 
 

 いつも女性の陰に隠れがちな男性、それもZ世代(1990年代半ばから2010年代前半生まれ)のメンズトレンドに注目してみましょう。このごろ「Z世代メンズがおもしろい!」と話題になる場面が増えてきています。

 

●ウェルビーイング男子 
 数年前か“らウェルビーイング”は時代の切り口となりよく耳にする言葉になりました。身体だけでなく精神面や社会面においても全てがその人にとって究極的な善い状態を意味しますが、何かをがまんして上を目指すことを子供時代から教え込まれた世代には難解な概念です。

 

 しかし、Z世代の男女は自分にとっての快適さを手に入れやすい時代に育った世代なので、男性でも“ととのう”“on offの切り替え”を重視し、サウナはもちろんのこと、睡眠の質を上げるための寝具やグッズ、高原や川など自然豊かな場への遠出などの消費や行動がトレンドになっています。

 

 知人のZ世代メンズは紅茶やハーブティの専門店めぐりをし、アロマ専門店でルームフレグランスを購入しています。先日、大型家具店に行くとZ世代メンズが数十万円するベッドの購入を検討していました。「最近、若い世代が良い家具を探しに来る」と販売員が言っていました。若者→狭い下宿→せんべい布団の時代は太古の昔で“ウェルビーイングな生き方”がZ世代男子のテーマになっています。

 
 

●やりすぎない さりげない
 渋谷や原宿に来るZ世代は男女ともに時流に合ったそれなりのおしゃれをしているので定点観測にはピッタリの場です。今ではスポーツカジュアルが主流ファッションになる中、意識の高いZ世代メンズはこれ見よがしなロゴやデザインのあるブランドファッションは避け、スニーカーやショルダーバッグにポイントを置いた、やりすぎでなくこだわりをさりげなくアクセントにおしゃれをするメンズが増えてきました。

 

 一見、フツーのメンズ、通りすがりに「オッ、ここがポイントね!」というような男性たちです。周りとの調和は乱さぬよう、無理や過剰はNG。しかし、自分なりのスタイルは楽しむという無理はしないファッションです。これも前述の“ウェルビーイング”につながる感覚なのかもしれません。

 

 “さりげなさ”では男性コスメも売上を伸ばしています。基礎化粧品やメイクアップコスメ等を日常的に使うZ世代男子が増え、各ブランドは男性にも買いやすい商品づくりや店舗デザインに注力する時代になっています。百貨店やショッピングセンターのコスメコーナーに行くと、若い男性だけで買物をする姿をよく見かけるようになりました。肌を整えるスキンケア商品やメイクアップ用のファンデーションやBBクリーム(下地クリーム)、アイブロウペンシル(眉毛ライン書き)等が主力商品です。

 

 ある調査では2017年から2023年までの6年間で10代~20代男性の化粧品市場は2倍以上になっているそうです。YouTubeやTikTokでは若い男性がスッピンから自分を見事な美男美女に仕上げるメイクアップ紹介の動画があり、つい見入ってしまうほどの技術力です。

 

 Z世代メンズの美容への関心が高まるのは他世代メンズにも良い影響になっていくはずです。

 
 

●Z世代メンズは年上女性好き?!
 この数年の若い男性意識ではパワフルで突き進むような男性らしさはNGとされ、やや中性的な印象の静かで落ち着いたしなやかな男性像がカッコイイとされてきました。今のZ世代もこの流れを汲んでいますが「芯がある」「リードする」「頼れる」といった価値観を持つようになってきていて、一見控えめで、無理はしていないが実は軸ありというのが“カッコイイマインド”になっているようです。言われてみると話題になる男性俳優はこういうイメージの人が多いように感じます。

 

 そんなZ世代男子は、何と年上女性が好きな傾向にあり、との調査結果があります。理由は「経済的に安定している」「感情的なトラブルが少なそう」「人生経験の豊富さから安心感や安定感を感じられそう」という理由が挙げられました。この結果は深くうなずけます。

 

 「年上の女房は金のわらじを履いてでも探せ」という昔の言葉があります。年上の女房は気配りができ安定している人という意味の昔々の言葉ですが、結婚相手でも付き合う相手でも、トラブルやストレスを極力少なくした安心安定のパートナーとの関係性を求める気持ちは、ストレス社会の中でより強くなってきているメンズの流れになっています。

 
 

 こんな新時代の男性像が新たな市場を生みそうです。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2025年1月号掲載)