MAGAZINE

2019.06.17

販売士

ベビー&ママを 街で受け入れよう

 

ベビーとママのBOX出現!!
 写真をご覧ください。ショッピングセンター(以下SC)で見かけたのですが、何だと思いますか?実はこのBOXは「mamaro」という幅180cm、高さ200cm、奥行き90cmの完全個室型授乳空間で赤ちゃんに授乳したり離乳食を食べさせ寝かしつけたりする、ママと赤ちゃんのためのBOXです。もちろん、子ども連れパパの利用もOKで、施錠ができ使用中には外部に光が点灯し、内部は一畳ほどの広さの小さな独立空間になっています。
 赤ちゃんがいる間は外出がままならず、いざ出掛けてみると授乳や休憩で不便なことに遭遇するママはヘトヘトになってしまいます。そんな状況を見かねた企業がこんなBOXタイプの個室を開発し、関東圏のある私鉄駅では1ヵ月に822回の利用があったそうです。
 
 ECが盛況でリアルショップが苦戦している今、一人でも多くのお客様を街でお迎えしたいと思っている私たちです。たしかにお年寄りや障害を持つ人々のための街のバリアフリー化はこの20年で促進され不自由さが軽減されてきましたが、乳幼児に対応する街中の施設や機能はようやく社会が意識をしはじめたという感があります。もっともっとベビー&ママを街で受け入れたいものです。
 
 

子育てママが行きたくなる商業施設
 3歳児のママである知人に好きな買物場所をたずねると伊勢丹新宿店だと言います。何故?と聞くとこんな話をしてくれました。
 
 伊勢丹新宿店6階にあるベビー休憩室は充実した子ども対応施設で、おむつ替えコーナー、離乳食・調乳コーナー、休憩コーナー、ママだけが入室可能な授乳室と4つのゾーンに分かれており、ベビーフードやおやつ、子ども用飲料の自動販売機や交換後のおむつの圧縮処理機、ペーパーシーツなどの備品が十分で、隣接するレストランでは子ども用メニューが導入されているそうです。
 子連れで行くには尻込みしそうな新宿ですが、平日に車で行けば母子だけのストレスフリーなショッピングが楽しめる快適百貨店で、知人ママはトレンドファッションも見たいおしゃれ心からたびたび子連れで遊びに行くそうです。
 伊勢丹新宿店はさすがに一流百貨店だけありすでに20年前からベビー休憩室を開設し、数年前に大規模リニューアルを実施した今ではネット上で子育て世代のママに評価される百貨店として有名になっています。
 
 では、SCではどこが評判がよいのかを他のママに聞くと「グランツリー武蔵小杉」の名前が挙がってきました。広くて大きなベビールームは混んでいても順番待ちをしなくてよいうえ、多目的に使えるコミュニケーションテーブルもあるので、自然にママ同士の会話が弾んでママ友ができるきっかけにもなるそうです。特に広い空間のためママやパパだけではなくおじいさんやおばあさんも一緒にベビールームに気兼ねなく入室できる点も郊外SCならではの評価ポイントになっています。
このSC派の知人ママに百貨店のことを聞くと「百貨店では子ども服売場に行かないとベビールームがないけれど、新しい郊外SCは複数のベビールームが設置されているので利便性が高い」と話してくれました。なるほど!!現役ママじゃないと語れない話ですね。
 
 乳幼児対応について私の経験からお話をします。数年前に、ある財団法人の駐車場を評価する委員をしており、全国の駐車場を見てまわりました。駐車場の品質やサービスについてチェックをするのですが、子どもの安全な乗降スペースの確保と乗降前後の待機場所の確保、さらにトランクにベビーカーや荷物を積み込む際のスペースや駐車場から店の入口までの車路と交わらない歩道の確保などを十分に計画された館や店は驚くほど少なく、多くの商業施設では簡易に効率的に作られていました。
 上記に挙げたポイントは子育て世代のニーズだけではなく、高齢者や障害を持つ人のニーズでもあるので残念な実態でした。
 
 

楽しい買物のための快適づくり
 雑貨屋の開発担当のベテラン女性が「近頃はお休み処やベビールームや子どもの遊び場が充実した店でないとお客様が来てくれなくなりました。ECで簡単に物が買える時代だから、私たちは楽しくショッピングができる快適な環境づくりを心掛けないとダメですよね」と言っていました。まさにその通り。店舗であっても館であっても、ちょっと休めるスペースや荷物を置けたり預けたりする場所や乳幼児に対応できる機能があるなど、何らかの配慮がママやパパの喜ぶショッピングの場になっていく時代です。前述したBOXは素晴らしい着眼だと思いますが、小さなテンポラリー空間にベビー&ママを入れるのではなく、充実した機能と環境の整えの中で受け入れられるような場づくりを本来はしっかりしていかなければならないと思います。次の時代を担うママとベビーのために。
 
 
(記:島村 美由紀/販売士 第33号(平成31年6月10日発行)女性視点の店づくり⑱掲載)