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2019.02.01

不動産フォーラム21

電車とシューズと箱根駅伝

 

 新春恒例の箱根駅伝が今年も開催されました。大会5連覇を目指す青山学院大学に注目が集まりましたが、結果は東海大学が総合優勝となり新たなドラマが生まれました。

 
 

●山手線で箱根駅伝に出合う

 昨年12月、山手線に乗ると何やら車内の雰囲気が変です。車内を見渡すと中吊り広告の場所に細長いノレンのようなヒモのような物が垂れ下がっています。色もバラバラでおよそ広告には見えないため一体何なのだろうと反対側を見ると箱根駅伝出場校の21本の襷が掲示されていました。ノレンのようなヒモのような長細の物は襷で意外な展開に驚きました。

 乗車扉上部のモニターには箱根駅伝開催告知ポスターが、その他のモニターには出場校を紹介するビデオ、乗車扉横のスペースには出場校のポスターが掲示されていました。車両の中が箱根駅伝ワールドと化しています。インパクトありました!!

 調べてみるとこれは山手線の一車両をまるごと同一クライアント(広告を出稿する得意先企業)による広告電車「ADトレイン」というもので広告主は日本テレビで箱根駅伝のADトレインはすでに2004年から始まっているそうです。気付かなかったなぁ~。過去には車体広告として車体に襷をデザインした電車を走らせたこともあるとか。山手線の車両が襷をかけた学生選手となって東京を走り抜いたわけですから想像してみるとこれも面白い企画だったと思います。気付かずに残念でした。

 さて今回の襷中吊り広告企画は2017年が初回で今回(2018年)が2度目だそうです。何しろ1電車に1車両だけですからこの車両に乗り合わせられたのはラッキーで知人から「運が良い」と褒められました。

 襷を模したポスターは評判を呼んだらしく「1枚の襷風の素材の布に21枚分の襷デザインを印刷し、その後レーザーカッターで切り離して短冊状にした」そうですので、製作者の苦労の甲斐があって、注目を集めたプロモーションになっていました。2020年箱根駅伝をどんなアイディアで広告展開してくれるのか、次が楽しみです。

 
 

靴底と駅伝の新たな関係
 この数年、スニーカーブームで各スポーツメーカーは様々なスニーカーを開発し、トレンドを作り出しています。実は今回の箱根駅伝でもシューズに注目が集まりました。シューズというより靴底に注目が集まったのですが、今までの陸上界では短距離は厚いソール、長距離は薄いソールというのがセオリーでシューズが開発されてきたそうです。しかし数年前にナイキが業界常識を破り長距離用の厚底シューズを開発した結果、昨年から世界最速のマラソンランナーのパフォーマンスが向上しベルリンマラソンやシカゴマラソンで驚異的な記録が更新されました。そして今回の箱根駅伝でも230人選手のうち95人がこのナイキの厚底シューズを履いており10区間の区間賞のうち7名がナイキの厚底シューズだったと発表されました。ナイキズームヴェイパーフライ4%フライニットというこの注目のシューズは\28,080と高額ですが、夢のスピードと軽やかなフォームをもたらしてくれるならお安いものだと素人ランナーの間では飛ぶように売れています。箱根駅伝が日本人にとって身近なイベントであり選手たちが共感を呼ぶ存在であるだけに、このヒット商品は爆発力がありますね。

 

 すでに95回目となる箱根駅伝は1987年からテレビ中継が開始されましたが、近年はイケメン選手の登場やキャラの立つ監督の露出で多くの人々が駅伝に興味をもつようになりました。正直、私も青学が優勝するようになってからのファンの1人です。ファンが多くなるほどプロモーションや関連商品の開発など今後の多面的な広がりにも興味がわく国民的イベントに成熟している箱根駅伝です。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2019年2月号掲載)