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2018.10.01

不動産フォーラム21

「ラン活」は夏がピーク!!

 

 街を歩いていたらめずらしいランドセル専門店を見つけました。面白そうだと店内をのぞいて驚きました。そこには色とりどりの凝った作りのランドセルが陳列されていたのです。

 

ランドセル販売のピークは夏!!

 私を買物客だと見定めたのか、店員さんが話しかけてきました。「お客様、女のお子さんですか?どんなお色がよいでしょうか。商品によっては欠品しているものもありますので。」との話に、まだ秋口だというのに「欠品だ」なんて不届きなことを言う人だなあ、と思い「えっ、欠品ですか!?」と聞き返すと、「ええ、ランドセルが売れるのは4月~8月で夏が一番のピークなんです。夏休みでパパやママが子供を連れて実家に帰ると来年入学式の孫のためにおじいちゃん、おばあちゃんがランドセルプレゼントとなりみんなでランドセルを買いに来てくれます。だいたい人気のある商品は在庫を十分に持っていても8月頃には欠品か品薄になりますね。」なるほど、これぞまさに祖父母と父母と孫の三世代が楽しむ三世代消費の代表例なのだと理解しました。常に市場観察を怠りなくやっているつもりでもまだまだ未踏のステージがあったのだと反省しました。「じゃ、今店内にある商品はちょっと売れ残りか不人気ランドセルということになりますね。親戚の子供にプレゼントしようかと思ったのですが……」と店員さんの反応を見るつもりで意地悪なことを言ってみると「売れ残りというわけではないですよ。これやあれなどは女の子人気が高く、雑誌にも紹介された商品です。まあ、ランドセルはある意味季節商品ですから、人気があっても夏に欠品になると追加生産はしないもので、秋以降はそんなに売れませんから。やはり、お子さんやお孫さんの入学を楽しみにしている人たちは早め早めに準備をされますからね。」と言われてしまいました。消費者心理はまさにその通りですよね。

 

いろいろ試して子供の納得購入

 店員さんに「ためになる話」を聞いていると、本物のお客様が入店されました。70代のマダムです。病気のため入院をされていてお孫さんのためのランドセル購入が遅くなってしまったそうです。お孫さんからこれがほしいというリクエストのカタログを持参されていましたが、その店の商品ではありませんでした。「孫はこれがいいと言っているらしいけれど、人工皮革で4万円と安すぎる。何だかキラキラした星の絵が描いてあって、こんなのはすぐ飽きてしまうはず。長く使うのだから本革でしっかりした作りでないと。」と店内を見渡し、10万円もするランドセルを手に取っています。色も女の子の定番の赤。さすがに高額だけあって店員さんがランドセルの上ぶたを上げるとその内側は洒落た小花のプリントになっていて内ポケットはチャック付き。内ポケットにも押し型の模様があり、デザインが凝っています。

 大人の感覚で見るとマダムが気に入るのは当然のすてきなランドセルですが、そこはベテランの店員さんです。「お客様、ランドセルを使うのはお孫さんですから、大人感覚とはちょっと違うポイントでお子さんたちは選ばれますよ。品を見ていないうちは、そのカタログのようなキラキラ系がほしいと思われる女の子が多いようですが、長く使われる品だから、いろんなタイプのランドセルをたくさん見てもらうと、素材や感触等だんだんわかってきて、自分の気に入ったものを見つけられます。ぜひ、お孫さんと一緒にお越しください。」と接客をすると、マダムも「それはそうね。私が気に入ってもしょうがないから。」と笑いながら再来店を約束して新しいカタログを手に帰っていかれました。大人が良いと思うものを押し付けても、後日交換や返品になる確率が高いので、子供の納得購入は大切なポイントなのだそうです。

 

 「ラン活」という言葉があるそうです。子供の数は減少していますが余裕のある祖父母層が増え、孫への贈答に1月からゴールデンウィーク、そして夏休みにかけてランドセル購入活動に走ることを「ラン活」と呼びます。小学1年生は2017年で104万人。平均ランドセル購入額は4.4万円でランドセル市場は約450億円と年々増加傾向だそうです。恐るべし「孫消費」ですね。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2018年10月号掲載)