不動産フォーラム21
ネコロボットに怒られた‼-ネコ型配膳ロボットの効果大-
●ネコロボットと私
休日の朝、所用で立川に行きファミレス「ジョナサン」に立ち寄りました。早い時間だったので店内はすいていて「お空きな席へどーぞ」とスタッフの声掛けで奥のテーブルへ。近ごろ普及しているタブレット端末で朝食メニューを選びセルフオーダーを済ませしばし新聞を広げ(ここがアナログ)ニュースをチェックしていると、「○○ニャン」「✕✕ニャン」とハイトーンな声が聞こえてきます。アニメの販促キャンペーンでもやっているのかと聞き流していると、「お待たせしました。」とばかりにネコロボットが私の朝食を運んできました。予期せぬ出来事に多少動揺しましたが私の身体はしっかり反応して立ち上がりお膳を受け取ると、ネコはサッサと帰っていきます。「すごーい、ネコロボットだ‼」目がクリクリして猫耳まで付いています。
その後はこのネコロボットに目が釘付けになりました。感心したのは厨房を出る時「今から行ってくるニャン」としゃべっていたり、子供が頭をなでると目が細くなってウットリ表情になったり、しつこくすると「さわらないで」とも言っているのです。驚きました。
早朝ですいている時間帯だからロボットが通路を行ったり来たりできるのだろうが、客の多い時間帯は通路進行は無理だろう、スタッフの少ない時間帯(閑散時間)の補助的存在だとこの時は考えました。
この日の所用が長引き夜8時に再度知人とジョナサンを利用しました。店内はコンサート帰りの若者でいっぱいです。朝の予想に反しネコロボットが活躍しています。通路を歩く客をセンサーでキャッチしつつ問題なく料理を運んでいるのです。「やるな、ネコロボット‼」
私たちの席に注文料理が運ばれてきました。またもや私も知人も身体はすんなりと反応して立ち上がりロボットのトレイからお膳を受け取っています。今までならスタッフが運んでくれテーブルにセットしてくれるのを当然のように見ていただけの私たちですがネコロボットの登場で料理のテーブルセッティングをいそいそとおこなっているのです。「あれ?サラダが一皿多くない?」と思いきやこちらの注文ミスでネコロボットのミスではありませんでした。あまりに完璧な働きのロボットだから“まちがえ”を見つけてうれしくなったところが浅はかな私です。知人のナデナデに目を細めたネコはクルッと向きを変え(キレのある動き)帰っていきました。「ありがとうニャン」と素直な私たち。
●効率改善+顧客満足
ジョナサンを展開するすかいらーくグループでは、2021年から導入を進めてきたネコ型配膳ロボットをグループ約3,000店舗のうち7割に当たる店で約3,000台の導入が進んでいるそうです。ロボットは高さ129cm幅55cmのBellaBot(べラボット)という名で中国で開発されたロボットです。一度に多くの料理を運べることで時間短縮となり、従業員の負担が軽減されピーク時の回転率が改善されたとすかいらーくは発表しています。
人出不足時代の効率化に役立つことはロボット導入効果の基本だと思いますが、数字では測れない大きな効果は配膳がエンタテインメントになったことだと思います。大の大人がネコロボットに興奮したりナデナデしたり「かわいいニャン」なんて話しかけたりしているのです。当然のこと子供たちもネコロボ会いたさに来店となりクリスマス・お正月にはネコロボを着飾らせてシーズン演出するなどという工夫もできるわけですから、ネコロボがお客のハートをガッツリつかんでしまった貢献度は計り知れません。
2018年5月号で私は初期の配膳ロボットを紹介していて、ロボットは無人で人手不足解消のためだが「ご注文は以上でよろしかったですか?」なんてしゃべってくれると楽しく人気が出るはず、と書いています。あれから5年後のいま、その通りネコロボットがいま全国で活躍する時代になりました。頻度高くファミレスを利用する読者はすでにご存じのネコロボットだと思いますが、効率だけではなく愛嬌やいやしもくれるロボットの効果につくづく時代の進歩を感じました。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2023年5月号掲載)