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2011.02.02

日経流通新聞

「ヨドバシの店づくり 食品・衣料 買い回り導く」

 

 個人的に好感が持てない業態に家電量販店があった。うるさいBGM、独特な立ち振る舞いの店員、雑然とした店内……。ワサワサした雰囲気のため用事がない限り接点を持たぬ店だった。

 

 ところが昨年11月に開業したヨドバシカメラの「マルチメディア京都」に行って驚いた。デパ地下ならぬ”ヨドチカ”と銘打った地下2階には、生鮮3品が充実した約1300平方㍍の食品スーパー(SM)のほか、手芸品店「ユザワヤ」やナチュラルテイスト衣料・雑貨「niko and…」といったテナントが並んでいる。

 

 また、40店が入居する4~5階のファッション・雑貨フロアには輸入玩具「ボーネルランド」、登山専門店「好日山荘」など特色のある店がそろう。1Fは小路に面してカフェやフローリストが軒を連ね、まるでパリの街角のようだ。

 

 同社は全国に21店舗展開し、京都のような専門店導入型は6店ある。2001年に大阪市で開業したマルチメディア梅田も食品売り場やファッションテナントに挑んだが、ともに不振のため撤退や実用衣料品店へ転換した経緯がある。

 

 京都駅周辺は住宅密集地でも大型SMは不在。郊外には総合スーパーが少なく、ホビーやファミリーファッション業態はニーズが高い。商品政策(MD)からみて京都は梅田のリベンジプロジェクトとして成功する可能性は大きい。

 

 それ以上に食品から家電、ファッションから家電への買い回りがマルチMDによってつくられることは、私のような客層までとりこむチャンスを生む。店にとっても客にとっても好ましい出来事だ。

 

 

(記:島村美由紀/日経流通新聞「なぜなぜ繁盛店」 2011年2月2日掲載)