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2008.12.10

日経流通新聞

「さくらやの紙袋 女性が運ぶ街の広告塔に」

 

 女性感覚で見ると、紙袋は使えるモノと使えないモノの二種類に大別される。使えるとはストックしておき外出時の物入れに再利用できる感度のあるモノ。使えないとはダサいのでそのままゴミ箱行きのモノ。小売りの各店は紙袋にコストをかけているが、女性によって後者に分類されてしまう袋が過半であろう。紙袋は歩く広告塔だけに長く持ち歩いて欲しいところだが……。

 

 「これだったら買い物の帰りでもデートできますネ」と若い女性の評価を得たのは家電量販店さくらやの劇的に変化した紙袋だ。誰が見てもデカデカと「さくらや!」と記した従来の紙袋とは天と地ほどの違いがあるキュートなデザインの新生さくらや紙袋は、使えないヤツから使えるヤツに昇格した。

 

 従来の紙袋が十年目を迎えたことをきっかけに、全店で今春からこの新紙袋が導入された。デザインコンセプトは女性に紙袋を再利用してもらう事と、さくらやのマスコットである「サクレツくん」をかわいらしくアピールするという二点であった。狙いは見事に当たり、街行く女の子の中にピンクXブラウンのサクレツくんバックを持ち歩く姿を目撃するようになった。まさに歩く広告塔であり、さくらやの新ブランディングである。

 

 デートの後にこっそり行く家電店ではなく家電店に行ってから友人や彼に会えるようになったのは、女子的にうれしい変化だ。サクレツくんが女心をうまくとらえた。家電量販店幹部の頭も少し柔らかくなってきた兆しととらえたが……。次は家電売り場の進化に期待したい。

 

 

(記:島村美由紀/日経流通新聞「How To 商い」 2008年12月10日掲載)