2008.09.24
日経流通新聞
「個人客標準の土産物店 こだわりの品ずらり」
団体から個人旅行の時代になったと言われて久しい。観光地の宿泊施設は“個”対応を急いでいるが、旧態依然のままの分野に土産屋がある。箱菓子・漬物・地酒ばかりで、成熟化する客への感性へのアプローチで遅れている。
長崎県雲仙の老舗「九州ホテル」にスーベニールセレクトショップ「雲花」が今春開業した。この店は宿の個人対応強化策として計画された店で、長崎周辺の陶芸家やガラス工芸家の作品、九州の伝統工芸品をプロのバイヤーが地元を歩いて選び出した商品を並べている。また地産のはちみつなどのこだわり食品も探し出している。まさに感度良い個人客が旅の思い出として「自分へのご褒美」をカタチにしたセレクトショップだ。工芸品は意外と個性的な高額品から売れていき、中には八万円も陶器類を買った“大人買い”のミセスもいたという。
さらに雲花で面白いのは東京仕入れの雑貨がよく売れることだ。帽子、スカーフ、アクセサリーやエコバックが月に五十~八十単位で売れ、店側も驚いている。帽子などはリゾートファッションの演出で旅の気分づくりに、エコバックは友人への気の利いたみやげにと売れていく。五十~六十代ミドル層の孫みやげも人気があり、知育Tシャツや輸入玩具なども売れるという。どれも旅先の女性の深層心理をうまく商品構成に表している。旅の満足は宿や食だけではなく、気持ちの良い買い物も重要なファクター。旅先でもレベルの高い売り場が求められている。
(記:島村美由紀/日経流通新聞「なぜなぜ繁盛店」 2008年9月24日掲載)