MAGAZINE

2015.03.31

不動産フォーラム21

ゴルフ業界の不安

 

 春の幕開けとともにゴルフシーズンが始まりました。美人女子プロゴルファーの登場や男子花形プロの海外活躍で活気づくゴルフ業界ですが、実は大きな不安を抱えています。ゴルフ好きの人なら耳にしたことのある「2025年問題」です。

 

 2025年には約800万人いる団塊世代が後期高齢者(75歳以上)に達し医療費などの社会保障費用が急膨張する中で、後期高齢者が人口に占める割合が30%以上(3,658万人)となり社会保障給付費が144兆円に達すると予測されています。

 

 日本のゴルフ人口は95年の1,537万人をピークに減少し、2011年には924万人と40%減にもなっていますが、現在の主力ゴルフ人口を占める団塊世代が後期高齢者となり社会保障も十分ではなくなる2025年にはゴルフ人口がどこまで減ってしまうのか?業界に暗雲が立ち込めています。

 

 飛行機に乗って地上を眺めていると、ゴルフ場の多さに驚きますが、2011年時点でゴルフ場は2,413か所もあり、米国・英国に次いで多いそうです。ゴルフ人口は減少するがゴルフ場の数は多い。今の状況をとらえても苦難の業界ですが、2025年に向けて主力客層の団塊世代がゴルフ場から消えてしまう可能性が高いわけですから何割かのゴルフ場は経営困難になるでしょうし、クラブ、ボールやウェア等の用具・洋品も売れなくなる。業界全体が縮小を余儀なくさせる不安な先行きがゴルフ業界の「2025年問題」なのです。

 

 この不安な先行きを予測してか、ゴルフ人口対策として女性層と若者層の獲得に努力を始めたゴルフ場が多くあります。まず大きく変わったのがゴルフ場のクラブハウス。従来は男性が中心であったゴルフ場ですから女性はおまけみたいな存在でしたが、女性をお迎えするために浴室やロッカールームやトイレ等の充実、レストランでも女性客にはデザートサービスが付いたり、中にはボールをプレゼントしてくれるゴルフ場もあるほどです。また若年層向けには初心者向けゴルフコンペや関心を引くためのゴルフ場合コンが開催されたりと、ちょっと脱線気味な企画まで登場しています。が、株価も上昇しゴルフ業界の販売促進努力もあって近頃のゴルフ場はにぎわいを見せています。数年前に比較すれば、女性ゴルファーの姿も多く見かけるようになり、コンペの数も増加したような気がしますし、アスリート系男性ゴルファーも多くなり、ゴルフ場が中高年男性主体から、様々のスタイルや年齢の人々が集い楽しい場に変化してきたように見受けられます(高額ゴルフ場や名門ゴルフ場は別格ですが)。限定客層から多様客層にシフトすることはビジネスチャンスが拡大されることを意味するわけですから、ゴルフ業界のゴルフ人口増加努力が2025年に向けてどこまで成果を上げられるのか期待をしたいところです。

 

 しかし、ゴルフというスポーツは時代に逆行したスポーツであることは否めません。健康志向時代の今は“お手軽・お気軽”でスタートできるスポーツが何よりも人気があり、言うまでもなくその代表格がランニングです。「ちょっと走ってみようか!」という気になればTシャツにジャージにスニーカーという有り合わせスタイルですぐに走り始めることができ、徐々に楽しくなればスタイルにこだわり走る場所にこだわり仲間が自然にでき大会にも参加するようになる。気が向いて熟していくまでのステップに負荷のない段階がありますが、ゴルフは、道具、ある程度の技術、ゴルフ場までの移動手段、高い料金、仲間という“お手軽・お気軽”という時代のキーワードとは真逆な、負荷の高いスポーツです。この大きな壁を乗り越えるためにはゴルフ業界は何をやったらよいのか、相当な難題です。

 

 近頃、打ちっ放しの練習場に行くと初心者の若いカップルやグループの姿や、明日初コンペ参加という若いサラリーマングループの姿を見かけるようになりました。彼らの姿に「やめないで続けようね!」と声をかけたくなるゴルフ好きの私です。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2015年4月号掲載)