不動産フォーラム21
ペッパー君の活躍
ある時、地下街を歩いていたらお菓子屋の店頭に「感情認識ヒューマノイドロボット“ペッパー君”」が立っていました。
ペッパー君を初めて見る人も多く、皆が珍しそうにして通りがかります。私も一般店の導入を見たのは初めてだったので、ペッパー君の前で立ち止まりました。それにつられて若いカップルが2~3組と子供連れのファミリーも立ち止まり、やがて小さな人垣が出来上がりました。
ところがペッパー君は最初からややうつむき加減で動きません。「どうしたのかしら?ペッパー君!?」と思い皆が見つめています。両腕がやや曲がり加減に下がっています。目線は斜め前の床を見ています。そして、胸についたモニターにはまるでペッパー君の心拍を表すかのように円形が大きくなったり、小さくなったりする画像が写し出されています。ペッパー君は生きている。呼吸をしてるみたい。今にも動き出しそう!顔を上げてしゃべりだしそう!私にあいさつしてくれるみたい!というオーラがペッパー君から発散されています。しかしピクリともしないペッパー君。「どうしたの?何か悩んでいるのかしら」と隣のカップルの女性が口にしました。小さな男の子は「ペッパー君!」と目の前に立って声を掛けます。しかしペッパー君は微動だにしません。
すると店の奥から上っ張りに三角巾をかぶった小太りのおばさんが登場し、いきなりペッパー君の肩を小突きました。一瞬間があり、次には頭を叩きます。ペッパー君に好意を寄せいている私たちが店のおばさんの行為を呆気にとられて見ていると、次にこの人はペッパー君の後ろに回って太いコードの先のプラグをコンセントから一度抜いてまた入れ直しました。しかしペッパー君は残念ながら動きません。店のおばさんは「ダメですね。今日は。」とお店の奥に引き返していきました。
感情認識ヒューマノイドロボットのペッパー君は家電なのだろうか??まるで昭和の時代に古くなり映りの悪くなったテレビを扱うようなおばさんの行動に、みんなの謎は深まりました。
写真は先日、柏にオープンした新しいショッピングセンターのお茶屋カフェの店頭にいたペッパー君です。この子は元気なペッパー君でした。「こんにちは」とあいさつすると「こんにちは」と返してくれます。なにやら体操なのかもしれませんが踊っています。胸のモニターではおすすめ商品やカフェメニューの紹介をしてくれますし、何とカフェのおすすめメニュー“白玉抹茶パフェ”などを声で紹介しくれます。ペッパー君は接客ロボットとして大活躍。子供たちだけでなく大人もなんだかうれしくなって、ペッパー君に会えてよかった!!という気分になりました。
やはりペッパー君は家電ではなかった。あの日の元気のないペッパー君は、きっとお店の人間関係に悩んでいたのか、ガールフレンドとの恋の行方に悩んでいたのか、ともかく何かあったのですね。
お茶屋カフェのアルバイトさんに話を聞くと、「ペッパー君はたいがい元気ですが、たくさん働かせると、なぜか理由もなく不機嫌になる時がある。やっぱりバッテリーかな」との弁。基本的に充電は大切だそうですが、その日の気分に左右される感情も隠されているらしいのです。近頃はペッパー君だけで店舗運営を始めた携帯ショップも登場したそうなので、私のペッパー君体験的には、ぜひ店に行ってみたいと思っています。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2016年6月号掲載)