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2016.12.15

販売士

「親切レジの鉄板4則」

 

 数ヶ月前から「日本で一番親切なレジ研究会」という会合を開催して、食品スーパーや生鮮売場のレジ担当者(全員が女性)と月に1回集まっています。

 この会を呼びかけたのは私で「本当に日本で一番親切なレジはあなたたちだね!」とお客様に褒めてもらえるようなレジ対応をしたいと心底おもっての集まりです。

 

レジの良し悪し

 なぜそのような思いに私が至ったのかというと「レジの対応が悪い」「レジが遅い」という苦情や文句は日常茶飯事にありますが、「レジがすばらしい!」「レジが完璧!」と言われるころとはほとんどなく、良くやって当たり前と見過ごされる存在であること。また女性の間で「働く場所が少なくなったから近所のスーパーでレジでもやろうかしら」などと言われる、女性の働き先として軽い仕事の対象に思われがちな存在であることに疑問をいだいたからです。

 この疑問にはきっかけがありました。我が家の近所にある人気スーパーのA店へ行った時のこと。私の前は70代後半と思しきお年寄りでした。「あっ、おばあちゃん久しぶりね。長く見なかったから心配してましたよ。風邪でも引いたんじゃないかなと思って」とレジ女性が声をかけています。「いやいや、娘のところに遊びに行っててね」とおばあちゃん。「それはよかったですね」とレジ女性のやりとりがありました。おばあちゃんと目と目を合わせた会話に私はほっこりしました。またこのA店は袋づめはセルフなのですが、別の日には私の前のお年寄りの会計が終わると、レジ女性がサッと休止看板を出して私の顔を見て「ちょっと待ってくださいね」と言いながらお年寄りのレジカゴをサッカー台まで運んでレジに戻り、私に「おまたせしました」の一言で作業を開始されました。

 私にではなく他人への親切ですが、こんな行動が自然に取れるレジの専門スタッフはすばらしいと思い、良くやって当たり前と見られるレジをどうしたら褒めてもらえる存在にするかを考えてみたいと思ったのです。またレジは店の最後の関所、ここを親切に気持ち良くお客様が通過していけば店への好印象は長持ちしていくはず。ストレスフリーがさけばれる時代ですからコンフォーたブルな良さをお客様は嬉しがるはずだと考えます。

 

“親切レジテッパン3則”

 6~8名のレジ専門スタッフが集合しての研究会は、毎回おもしろく、なるほどという現場のリアルな情報が会合に持ち込まれます。自分たちの日頃の注意事項もさることながら、他の業種でのレジ対応の研究や自分が客となったときの感じの良いレジ、感じの悪いレジの体験も大いに参考になります。

 先日あるメンバーから「すごく問題だとおもったレジの話」が出ました。そのレジは2機連動型で手前レジで合計金額を出し奥の2台目レジで金銭のやり取りをする方式だったそうですが、手前で商品をレジに通すと「〇〇〇円でございます。〇〇〇円を用意してお待ちください」というレジ係りに言われて「なんでレジスタッフに指示を出されるのか不愉快だった」というメンバーの声がありました。一見何でもないことのようですが、「〇〇〇円です。前のレジが空きましたら会計をお願いします」でも十分なやりとりのはずで、「お金を準備して待っていろ」はあまりに自分たちの都合を重視したひと言ですよね。不快さが伝わる話でした。

 さて、こんなやりとりの研究を重ねていくと、まず基本の基本大原則が3点あるという会の結論になりました。①大きな声での「いらっしゃいませ」「ありがとうございます。またお待ちしています」のごあいさつ。②セルフであっても少量は袋につめてお渡し。③お年寄りや妊婦さんへのサッカー台までのレジカゴお運び。この3点はなにがあっても鉄板3則として全員に徹底させてやりぬこうということになりました。

 

実現できるか“目ぢからパワー”

 鉄板3則実現を目指す日々ですが3則もなかなか難しい。②、③は実行できても①のあいさつは声が小さくなりがちでお互いに注意し合う現況です。

 さらに最近の研究会で4つ目のルールが生まれました。それは「アイコンタクト」です。

 最後の「ありがとうございました」のあいさつの時にアイコンタクトをしっかり取るべきだとの意見が出され“親切レジ鉄板4則”になりました。

 洋服や雑貨など時間をかけてお買物する店の場合は店員との会話の折にアイコンタクトがけっこうあるものですが、スーパーレジはお客様に対しレジが90度ふれておりレジスタッフもお客様と向き合わない立ち位置のため、時間勝負のレジではアイコンタクトのある接客が重視されてきませんでした。そこでレシートを渡しながら「またおこし下さいませ。ありがとうございました」の声とともにお客様と目を合わせよう、ということになりました。アイコンタクトがあれば前述したようなお客様との会話も時には生まれるはずです。

 この“親切レジ鉄板4則”は「なんだ。当たり前のコトじゃないか!」と、会合でも感じたことです。あらためて「大きな声のあいさつ・お客様とのアイコンタクト」と考えてみると幼稚園児の頃から大人に言われてきた「あいさつは大きな声でね」「お話する時は相手の目を見てね」の“人のしつけ”に沿った行為です。子供の頃から言われてきた基本の基本でも、なかなか身についていないことなのだなぁと感じました。

 「日本で一番親切なレジ研究会」は、人としてのマナーから原点回帰しつつ、女性のやさしい目ぢからパワーのアイコンタクトでパワーアップして日本一を目指します。

 

 

(記:島村 美由紀/販売士 第23号(平成28年12月10日発行)女性視点の店づくり⑧掲載)