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2017.07.03

不動産フォーラム21

コンビニの使いこなし術は仮説コミュニケーション力

 

 都心部に暮らしているとコンビニエンスストア(以下「コンビニ」)が生活インフラとして欠かせないほど日々お世話になる存在です。
 先日も「駅前にF店があるけど自宅前の角ビルにS店が来てくれたら便利なのに」と家族で話をしていたら、その話を聞いていたかのようにS店が出店して我が家の生活インフラは充実版になりました。

 

百貨店を抜いたコンビニの存在

 全国にはコンビニが55,000店も出店しています。今、日本には1,718の市町村がありますから1市町村当たり32店舗が存在することになります。またその売上は年間約10兆6,000億円で、ついこの間まで小売業態の王様だった百貨店が5兆9,000億円と売上を年々減少させる今、コンビニ業界はグラフが示すように低迷する小売業界の中でも右肩上がりに成長し、2007年にはすでに百貨店売上を追い抜いています。誰もが小売業界では百貨店がNo.1という印象を持っていますが、実は百貨店売上高は1991年の9.7兆円をピークに今ではその6割程度の売上まで落ちているのが実態なのです。
 インターネットショッピングが盛んになり洋服も雑貨も贈答品もネットで注文することが増え、ずいぶん百貨店にはご無沙汰な生活になってしまいました。昔は百貨店に行くのが楽しみだったのですが、今ではあの大きな館に入っていくのがめんどくさい感じです。一方、コンビニは違います。生活インフラと前述したように、「そういえば○○が切れていたな・・・」「明日の朝の牛乳を」というようにチョッとしたド日常の買い場になっていますし、用事がなくとも帰り道にコンビニのあかりを見るとついフラリと立ち寄ってしまうほどの気楽な存在です。独居老人である80代の母は徒歩5分のコンビニに毎日通うのを歩行訓練にしており、夕食の惣菜など冷蔵庫代わりにコンビニを活用しています。
 コンビニ大手3社の発表ではこれからのコンビニは食品スーパーのような品揃えと利便性提供を充実させていくそうです。本当に毎日お世話になってありがたい存在のコンビニの今後に期待です。

 

コンビニの仮説コミュニケーションを考える

 さて、それほどに身近な存在のコンビニなのですが、近頃とても気になることがあります。それはコンビニにおけるスタッフとのコミュニケーションについてです。
 数年前からコンビニの店員に外国の若者が増えてきました。私の生活圏である渋谷や品川界隈のS店では、ほぼ全員が外国人スタッフによる接客で、ヤンさんやワンさんやマリアさんがカタカナネームプレ―トを胸に着けてレジ対応してくれます。若者が主ですからおそらく日本に来た留学生ががんばっているのでしょうね。ほほえましい姿なのですが、「ありがと△×△□だ~」「〇△△×ますか」「〇×〇です」と言葉がまったくはっきりしない。小声のこともあり何を言っているのかがわからないのです。しかし客は長年使いこなしてきたコンビニに業態ですから、きっと「温めますか?」と聞いているのだろう、「おつりは53円です」と言ってくれたのだろう、「ありがとうございました」と言ってくれたはずだ、とういう仮説コミュニケーションをとっています。都内はもとより、千葉や神奈川の店に行っても外国人のスタッフの「〇×△××だ~」の対応にどの客も仮説コミュニケーションでレジ対応が成り立っていて、「何を言っているのかわからない」と文句を言っている客は見たことがありません。これは凄い事で、それだけ客のコンビニ行動がルーティーンになっていてはずれることのない仮説が客にもスタッフにも頭の中に叩き込まれているのですね。こんな光景を見ても生活インフラとしてのコンビニの存在は凄い事だと思いますし、お客さんは皆やさしいですね。
 こんな感想を持っていたら、先日千葉市内のS店で外国人スタッフのマリアさんに「今日は雨降りだったから買物が夕方になっちゃたのよ」と世間話をするおばあさんを見かけました。マリアさんは会話力はないらしく無言ですがニコニコ笑って頷いています。雰囲気で意味は理解している様子。「じゃまた明日ね」と手を振るおばあさんにマリアさんの「ありあ○×□×た~」の声。おばあさんが毎日来てくれたら半年もするとマリアさんとの日本語会話が進む可能性は大いにありと感じた温かなシーンでした。
 しかし敢えて苦言を呈すると、55,000店、11兆円弱の規模を誇る業界ですから、基本の基本である接客教育をサービス業として徹底すべきではないでしょうか?百貨店、飲食店、量販店においても外国人の労働力を活用する業界は増加の一途です。他の業界は以前より接客教育を熱心に行い客とのコミュニケーションを大切にすることが当たり前になっていることは言わずもがな。
 複雑な会話はともかくとしても、店頭における基本対応の言葉は国籍を問わず身に付けるべきだと思います。人材不足の昨今、コンビニ進化は接客からも進化を期待です。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2017年7月号掲載)