MAGAZINE

2021.05.06

不動産フォーラム21

新日常のレジャー・スポーツ-続々と客が増える新市場-

  

●コロナでスポットライトが当たるゴルフ業界 
 長引くコロナ禍で密を避けられるとして注目を集めたスポーツの筆頭にゴルフが挙げられます。日本生産性本部のレジャー白書では2019年時点で日本のゴルフ人口は580万人で2009年比で40%減少、国内ゴルフ用品市場は3,400億円でピーク時の1991年比では40%減少。道具にお金がかかり、プレーも1日がかり、上達にも時間がかかるというコスパが悪いスポーツのゴルフは、団塊世代が老齢でプレーを卒業してしまう2025年頃に存亡の危機をむかえると言われていました。

 

 ところが、コロナで状況は一転し、「新しい生活様式」の浸透で自由時間が増え行動制限がかかる中、「3密」を回避できるスポーツレジャーとしてゴルフ人気が昨年の初夏頃から急激に高まっています。実際にリーズナブルなゴルフ場から混み合っていますし、多くのゴルフ場はゴールデンウィークの予約が1ヵ月以上前から満杯になりウェイティングが出ていたそうです。

 
 知人のキャディさんは、「たいがい1月中旬から2月にかけては寒さのためお客さんが減り、キャディ達の休暇取得時期や場内メンテナンス期間としているが、今年は予約が増えて休めなかった。春からは全員がフル稼働をしている」と言っていました。

 

 また知人のレッスンプロは、「昨年前半まで、ゴルフ業界の先行きを嘆く業界人が多くいたが、このところゴルファー急増でみんな多忙になった。スクールへの入学者も増え、若者や女性客等がレッスンを始めている」とのことでした。

 

 この変化に伴い不況のアパレル業界でもゴルフウェアブランドは売上を伸ばしています。人気のあるPブランドなどは19年度比3%~5%増の売上で好調。店舗をのぞくと従来見かけなかった若い女性客の姿が目立つようになっています。

 

 こんなアップトレンドの流れをキャッチして新しい開発が始まっています。

 

 例えば、ゴルフ用品のクラブやキャディバッグやウェア等のレンタル事業が生まれました。ゴルフを始めるときは他のスポーツとは違い、ゴルフクラブ一式を買いそろえ、靴もウェアも機能性ある専用のものが必要になり、ジョギング等とは異なり気軽なスタートが切りにくいスポーツです。そこに目を付けたゴルフ用品販売のA社は、3泊4日でクラブ単品のレンタルから初心者向け一式入門セットまでをつくりECサイトで貸し出しをしたところ、「まずはお試しに」という若者や女性客の反応が良いそうです。

 

 またアパレルブランドでは、ゴルフでしか着られないゴルフウェアから街着としても通用するロゴ目立ちが薄くキレイ目シンプルなカラーとデザインの新ラインの開発が始まっています。確かに用品レンタルや街着利用可のウェア等、今までもニーズは高かったと思いますが、ようやくゴルフ業界も上げ潮の時になりお客目線を持つようになってきたようです。

 

 さらに4月、米国マスターズトーナメントで松山英樹が優勝し業界はフォローの風吹くラッキーチャンスとなっています。

 
 

●近年のキャンプブームはさらに進化
 この数年、静かなブームをつくっていたキャンプがコロナ禍でさらに大幅に愛好者人口を伸ばしています。

 

 ゴルフ同様に「3密」を避けられ、ライフスタイルとしてもおしゃれ感がありコロナで自由時間が増え、街中へのお出かけやスポーツ観戦への制限から、「以前から気になっていたキャンプなるものにトライしてみよう」というビギナー層から、キャンプ経験者がメディア等で注目されたたった一人の「ソロキャンプ」を始めたり、他者との接触ゼロで感染なしのレジャーとして安全なファミリーキャンプを始めた一家等、客層が広がっています。

 

 このキャンプブームでもゴルフ同様にかつてはオフシーズンとされていた冬場にキャンプ用品が売れました。それはメーカー側がブームに乗って早めの新作モデルの先行販売で需要喚起を促したり、Go Toキャンペーンの中止で楽しみがなくなった人々が春からのキャンプ準備を早めに始めたという傾向があったそうです。

 

 一般的にキャンプ用品はアウトドアショップで購入できるものですが、専門性が高くクオリティもあるため高価格帯の品揃えで、キャンプをスタートさせるビギナーにとっては負担があります。そこに目を付けたホームセンターが、ファミリー層やビギナー層に向けた中間価格帯や低価格商品をそろえたホームセンターのキャンプ専門店やホームセンター内で大型のキャンプ用品ゾーンを設え、売上・集客ともに好調になっています。

 

 さらに、キャンプブームを受けて密を避けるため電車ではなく車でアウトドアを楽しもうというニーズが生まれ、高価であってもキャンピングカーの売れ行きが良かったり、キャンピングカーレンタルの利用者も前年比20%強で増えているという、クルマへの新ニーズも生まれています。確かに昨年来、高速道路等でキャンピングカーをよく見かけるようになったと感じます。

 
 

 この他に密を避けるアクティビティで釣りやサイクリング等、人々のレジャーの領域が拡大されています。どちらにしてもコロナがトリガーとなった新日常の新レジャー・スポーツが一過性ブームで終わりにならないよう、事業者のニーズの深掘りで新市場が確立されることに期待したいものです。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2021年5月号掲載)