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2017.10.02

不動産フォーラム21

ドラッグストアの快進撃

 

何でも揃うドラッグストア
 知人の住む田舎町には農協の経営するAコープしかなく食料品の買物には不便な生活をしていたそうですが、今年になりドラッグストアが開業して不便さは解消されたと嬉しそうな連絡がありました。
 ドラッグストアの進出で食料品の買物が便利になる!?という一見不思議なお話ですが、ドラッグストアをよく利用する人はすでにご存じのとおり、近頃のドラッグストアは医薬品だけではなく生鮮食品や日配品や加工品までも扱う食品スーパー並みの品揃え店になっています。
 数年前、私も親の介護で実家の近所のドラッグストアに介護用品を買いに行ったら、そこには牛乳やパンや卵までが売られていて驚きました。帰路でコンビニに寄るつもりでいたのですが、そのドラッグストアで全ての用が足せ、ドラッグストアの進化を認識しました。近頃ではドラッグストアを見つけると立ち寄り、その店の独自の食品品揃えをチェックすることが楽しみになっています。大方の店がコンビニを超える品揃えに成長してきていますし、地方の大型ドラッグストアは、まるで食品スーパーを抱え込んだような売場づくりをするに至っている店さえ登場しています。なおかつコンビニより食料品の値段は安かったりするので、ドラッグストアの業態を超越した進化ぶりはかなりドラマチックです。

 

進化の鍵は来店頻度

 ドラッグストアは一般用医薬品や健康・美容に関する雑貨・日用品等をセルフサービスで販売する小売業態であることは誰もが知っていますが、1990年代から徐々に食品(飲料や菓子類)を扱い始め、それが拡大の一途となったようです。キーポイントは来店頻度!!
 ドラッグストアの中心商品である医薬品や日用品は、日々必要とするものではなく、店に行く頻度もけして多くありません。ましてや使いつけの常備薬や日用品であれば、一度にまとめ買いをする人も多いでしょうから店に行くのは月に1~2回のペースではないでしょうか。それに比べ、食品を揃えるスーパーやコンビニはよく行きます。週に数回、いや毎日という人も多いはず。ドラッグストア各社は約20年前からそこに目を付け、デイリーにお客様の来店頻度を増やす作戦に出て食品領域拡大となったわけです。
 店の使い勝手がよくなれば消費者の利用が増え、それがドラッグストアを急成長に導いています。コンビニエンスストア全体の売上が10.5兆円といわれていますが、ドラッグストア売上は2000年の2.7兆円から急増して今では6.5兆円になり、コンビニエンスストアにぐいぐい迫ってきており、店舗数も増加の一途です。

 

お年寄りを取り込む調剤薬局機能

 全国で病院・診療所を合わせると11万ヶ所になり、そのうち医師の処方箋を外の調剤薬局に持っていきそこで薬を買う医薬分業率は2016年で約72%に達しているそうです。当然ドラッグストア各社では、来店チャンスのフックとなる調剤薬局機能を併設する店舗を増やす傾向にあり、大手ウェルシアHDやスギHDでは過半の店舗が調剤薬局を併設しお客様の利便性を重視しています。
 そこで注目するターゲットが高齢者層です。通院率が高く調剤薬局を必要とするお年寄りが、薬屋としてドラッグストアに立ち寄りそのついでに食品まで買物ができるとなると、コンビニエンスストアに行くよりドラッグストアの方がお年寄りには身近な存在になる可能性が高くなります。実家の80代の母も薬をもらいに行くついでに食パンやハムといった加工品をドラッグストアで買物をしている様子で、台所にはコンビニのビニール袋に加え某ドラッグストアのビニール袋が徐々に増えてきています。
 このドラッグストアの急成長ぶりはちょっと見逃せない小売業界の動向ですね。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2017年10月号掲載)