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2020.06.01

不動産フォーラム21

コロナ後 洋服をどう売りましょう?-悩ましい問題山積です。-

  

 コロナ禍の5月上旬、驚くニュースが伝わってきました。米ブランドのJ.Crew破綻、米の老舗百貨店であるニーマン・マーカス破綻というコロナ拡大による売上激減が影響した出来事です。

 

 J.Crewは1947年創業ブランドで、全米で181店舗を展開し品の良いプレッピースタイルと評され、ミッシェル・オバマ大統領夫人のお気に入りブランドとして有名でした。ニーマン・マーカスは1907年テキサス州ダラスで高級百貨店として創業、全米43店舗の展開で米国の代表的百貨店でした。昨年(2019年)春にはニューヨークの大規模再開発プロジェクトであるハドソンヤードに華々しく出店をして話題を集めた百貨店です。

 

 誰もが知っているビッグネームの2店だけに、コロナの猛威に恐れをなしている日本ではこの先どうなるのだろうと不安が募ります。

 
 

●コロナ禍でファッションスタイルが変化?
 コロナ感染拡大で「Stay Home」が叫ばれテレワークが広まり、百貨店や駅ビル等の商業店舗が一斉に休業となりました。仕事は4月初旬より社内でもクライアントとも必要に応じたオンラインによる会議に変わりました。通勤時間や相手先への訪問という移動時間がなくなり快適なワークスタイルを多くの人が経験したわけですが、映し出されるのは上半身ため通勤時のファッションスタイルは必要なくなり、誰もがカジュアルなシャツやニットスタイルになりました。特に女性はオンラインではお化粧も軽めでOK、という人が急増です。そのためかメイクアップ系化粧品は売上が50%以上減少という結果をもたらしました。合わせて、ファッションも外出自粛から春夏物の売上は実店舗で40~50%ダウン。逆にEC売上が15~25%アップとなりどのブランドも実質的な売上減少となっています。

 

 EC売上の中身を関係者にヒアリングすると、テレワークが主体になったためコートやジャケットは人気がなく、ボーダー柄や白やライトブルーや薄ピンクのような明るくさわやかに顔映りの良い色目の軽装に人気が集まり、コロナ後に本格化するかもしれないテレワークファッションの予兆が見られそうですが、モニター越しのため上半身のみの安価で見栄えの良いシンプルなニットやシャツが中心なので、売上は上がらないそうです。

 

 こんなファッション状況の中、可能性を見出しているのがスポーツ関連業界です。人々は「Stay Home」生活で健康維持のためジョギングやストレッチに励むようになりました。朝夕、街中を走るランナーが増えましたし、公園や自宅で体操やストレッチを楽しむ人が多くいます。外出のためのファッションが不要になった人もジョギングやストレッチをお洒落に楽しみたいとスポーツウェアやギアをECで購入する人が増加し、店舗によっては売上が50%アップの好調店もあります。

 

 たしかに街中を走るランナーはファッショナブルなスタイルの人が多いですし、自転車通勤者も増えそのサイクリングファッションも凝った人を見かけます。

 

 通勤電車は利用者が激減していますが、特に女性は足元がスニーカー、マスクのためメイクアップも控えめで全体にカジュアルな方向へと変わってきています。おそらく出社しても面会や会議など、人との接触回数を減らす働き方のため、“キチンとした身なり”を必要とされない時なのでしょう。

 
 

●コロナ収束後、ファッションの販売に悩む
 さて、コロナ収束後、世の中は大きなパラダイムシフトが起こると言われています。いろいろな価値観が変わりモノの見方や買い方に消費者心理は変化していくでしょうが、百貨店やファッションビルやブティックなどのファッションショップが再開した時、服をどのように扱ったらよいか? が、小売業の知人との会話で問題になりました。従来であればショップで商品を手に取り気に入ったものを試着して購入するという手順ですが、お客様に商品を手に取ってもらえるか? 試着が可能か? また接客では2mのソーシャルディスタンスをとれるか? 店の混雑を避けるため予約制にするか? 靴の試し履きはNG? 化粧品販売で美容部員がお客様の顔にタッチできずに商品をいかに売るか? 等々、問題山積で良い打開策はなかなか出てきません。

 
 

 コロナ禍をきっかけにテレワークが普及することが予想され人々の働き方や暮らし方は変化し、ファッションスタイルもその購入方法もECへ移行が進むはずです。しかし、リアルショップにおいてはまずコロナ収束期に店舗を再開させるため、お客様とのコミュニケーション方法にいくつもの課題がありこれを乗り越える知恵が必要になっています。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2020年6月号掲載)