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2020.05.11

不動産フォーラム21

コロナ世代とは呼ばせない!-新スタートを切る 若い人達に幸運を-

  

●コロナと卒服
 3月上旬、知人男性との会話で「小学校6年生の娘の卒業式が無観客卒業式になる」という話が出てきました。スポーツやイベントの“無観客”は耳にしていましたが、来賓や父兄や在校生の出席はなく教職員と卒業生のみで簡易に行われる卒業式を“無観客卒業式”と表現することに小さく感心をしながらパパゴコロに耳を傾けました。

 

 3人のお子さんの中で唯一の女の子だから知人も卒業式出席を楽しみにしていたそうです。「男の子と女の子ではそんなに違うものかしら?」と聞くと「もちろん、どの子供でも卒入学式は子供の成長を実感でき父親としての感慨深さを感じるイベントだが、今回は女の子だから数ヵ月前から“卒服”計画を娘と進めていたので晴れの日に出席できずに残念」なのだそうです。
 
 「何ですか、その卒服は?!」と思わずツッコミを入れました。“無観客卒業式”も初めて聞く言葉ですが“卒服”も初めてです。小6の女の子が卒業式に着る晴れファッションのことだそうで、こんな言葉が生まれるほど小6の女の子たちの卒業ファッションはこの10年でどんどん華やかになり、女子大学生のように着物に袴スタイルも人気になっているそうです。中にはヘアメイクを施してくる女の子もいるほどで、あまりにエスカレートしてしまい袴スタイル禁止令を出す小学校も増えているそうです。知人の家庭では袴スタイルにあこがれたお嬢さんと娘大好きパパが連れ立って袴セットを買い物に行き準備をしていましたが、娘の晴れ舞台に出席できずパパはがっかりしていました。着物に袴などさぞ高額なのだろうとネットで検索すると、「人気の卒服」として袴スタイルが小物等セットで1万円代後半~3万円台で購入できます。またレンタルもあります。中には着用した袴セットをすぐにメルカリ等の中古市場に出して、それを次の世代が買っていくという“サスティナブル”の流れも起こっています。恐るべきキッズトレンドですが、コロナウイルスは女の子たちの晴れ舞台を無観客にしてしまったわけです。知人のお嬢さんは「私たちってコロナ世代と呼ばれるのかな」と言っているそうです。

 
 

●誰コロナ世代ではありません
 よく行く飲食店でアルバイトをする女子大生が失業をしたと悲しんでいます。就職は都内の中堅不動産会社に決まっており春から親元を離れ都内で一人暮らしをスタートさせようと希望に燃えた3月でしたが、電話1本でコロナウイルス拡大による営業不振で内定取り消しを通告されたそうです。賃貸借契約をし引っ越しの準備もしていたマンションも泣く泣く解約したそう。22歳の乙女の春は厳しいものになり途方に暮れていました。今春卒の大学生の就職内定率は92.3%で過去最高と報道されたのは2月でしたが、コロナウイルスの蔓延は新卒大学生の社会への船出を一変させ厳しい状況をつくる事態となりました。

 
 4月に入り近所の小学校を通りかかった時のこと、先生らしき人たちが校庭に長テーブルを何脚も並べています。小学校は休校が継続していて人影もなかった日々でしたが何事だろうと見ていると、長テーブルに紙袋や資料等を並べています。やがて10時になるとパパやママに手を引かれたピカピカの1年生が校庭にやってきて荷物を受け取っています。中にはピンクのランドセルを背負った女の子もいます。お母さんも春らしい軽やかなファッションでうれしそう。しかし、先生から荷物を受け取り受け付けを済ませると何のセレモニーもなく親子は帰っていきます。小学校1年生の入学式はこれで終わり。世間では5月上旬まで学校休校が決定されたので、あの女の子がピンクのランドセルを背負って毎日登校できるようになるには時間がかかりそうです。残念な光景でした。
 
 
 ミレニアル世代やゆとり世代など、その時代に育った世代の特質を表す呼び方があります。過去には就職氷河期世代というマイナスイメージの呼び方をされる世代もいました。卒服を十分に楽しめなかった卒業式の小学6年生や入学式なしの小学1年生、突然内定取消しになった新卒大学生。ちょうど入学や卒業や入社等の人生のスタートを切るこの春にコロナウイルス拡大は多くの動きを止めてしまいました。どの人たちも「コロナ世代」などという呼び方をされないように、この若い世代の人々にこれからハッピーな事が起こって幸運の呼び名が付くよう願うばかりです。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2020年5月号掲載)