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2025.12.24

日経MJ

半歩リードで次の変化をつくる-札幌駅ビルの核「ステラプレイス」-

  

 近年、各地で大規模なビル開発が進んだが、札幌駅は22年前に駅やオフィス、商業施設、ホテル等を複合したJRタワーが開発され、北海道を代表する都市施設となった。その核は札幌ステラプレイスで売場面積約37,648㎡、227店舗を構える。2024年度には約2,955万人の入館者を集め、約457億円の売り上げを誇る駅ビルへと成長した。

 
 

新施設・新幹線延伸、成長さらに

 JRタワー(270,000㎡)の正面にある大時計は、文字盤に北海道にゆかりの深い星マークのデザインをあしらい、街の時計塔の役割を果たしている。札幌駅は明治13年に初代駅舎ができ、現在のJRタワーは6代目駅となる。最も長く市民に親しまれた3代目のネオルネサンス様式の木造駅舎のイメージを取り入れ、割り肌仕上げのレンガを使って歴史を表している。

 

 また、JRタワー中央に低層階(9層)のヒューマンスケールな建築を配し、高層棟(38階建て、173m)は東側に置くことで、街路や駅前広場などの街の流れに調和するよう市のエントランスゲートがデザインされている。

 

 館内には40点を超えるアートワークが随所に展開されている。長谷川仁氏が手がけた絶滅危惧種の野生動物たちをかたどった大型募金箱や、高層タワーからの眺望を意識したホームの上屋にある菊竹雪氏のサインアートのほか、アトリウム空間には待ち合わせスポットとなっている安田侃氏の彫刻などがある。

 

 今ではアートを街に生かす場面が各地にあるが、JRタワーや札幌ステラプレイスでは四半世紀前から駅や商業施設にアートを配置してきた。街ゆく人が日常でアートに触れられるように考えられ、開発された。

  

 札幌ステラプレイスのコンセプトは「札幌ネクストスタンダード」を掲げる。札幌駅総合開発の営業本部店舗開発部の掛村みどり部長は「半歩リード型の商業づくりを考えている」と話す。一歩ではなく半歩だけ市場をリードしていくことは難しいが、「今までつくった変化を振り返って確認し、次の変化を決める。時間をかけて戦略的にMDの変化を積み上げること」(掛村氏)という。

 

 その表れとして、札幌ステラプレイスではフロアやゾーンのMD構成を短い頻度でバージョンアップし、来館者に鮮度のある提案を打ち出してきた。また最新トレンドのテナントばかりではなく、ローカルな魅力のある店も積極的に発掘し、地元テナントの活躍の場を提供してきた。

 

 この22年間でコスメの「SHIRO」、スイーツの「よつ葉ホワイトコージ」、メンズアパレルの「ARCH」、回転寿司の「根室花まる」など4ブランドが東京や大阪に出店し、海外でも話題を集めている。旬なトレンドを紹介し地元の実力店を発掘しつつ、定番となる要素を織り交ぜる。こうしてMDを中和させることが次のスタンダードを形作る秘訣となっている。

 

 札幌ステラプレイスの開業前は、札幌パルコや丸井今井札幌本店が集積する大通りエリアが長く商業の中心地だった。駅前エリアには地下街や百貨店はあったものの、売上規模は小さく劣勢だった。それが駅前の開発が進み、数年で売上規模が逆転し、札幌ステラプレイスと隣接する大丸札幌店へと人々の買物の流れは変化した。

 

 その要因の一つに“商業環境”があげられる。札幌は明治以来、格子状に区画整備された碁盤の目の街だ。1972年の札幌オリンピック開催時に主な都市施設が整ったため、長年中心部には区画内に建物が収まり、大型商業施設が成立しない状況だった。そこに2003年、JRタワーの開業で札幌ステラプレイスと大丸札幌店がオープンした。天井の吹き抜け空間や3街区を一体にした大型の建物ができた。館内デザインもシャープで、モダンな空間を街の人々は体験することになった。

 

 現在、この大規模な商業環境は子供連れの家族や高齢者、若いカップルに快適な空間と商業の新鮮さを提供している。道内客だけでなく、北海道外からの観光客などの呼び込みにもつながっている。

 

 買物や食事、エンターテインメントも楽しめるほか、温泉に入ってホテルにも宿泊できる。このような複合機能の集積が駅を街に変え、時代に合わせて街を進化させてきた。店舗開発部の鴨田知憲マネージャーは「日本一の駅ビルを目指す」と話す。ここでいう日本一とは「売上ではなく、街としてパワーのある場所になること」だ。

 

 2028年の冬には、JR札幌駅高架下に店舗数200店、16,500㎡の新たな商業施設が開業する計画だ。2038年には北海道新幹線の札幌延伸開業が予定されている。ローカルの良さとグローバルの強さを持った北海道の代表施設は、次の成長ステップへ踏み出している。

 
 
(記:島村 美由紀/日経MJ「デザイン面」 2025年(令和7年)12月24日(水)掲載)